3種類の根管治療

  • 1.抜髄(ばつずい)
  • 2.感染根管治療(かんせんこんかんちりょう)
  • 3.再根管治療(さいこんかんちりょう)

抜髄(ばつずい)

虫歯で炎症を起こした神経を除去する治療

一般的に“歯の神経”と呼ばれている歯髄(しずい)は、神経線維と血管で構成されています。虫歯の原因細菌による歯髄への感染、咬み合わせが高い被せ物、知覚過敏などが原因で持続的に歯髄を刺激すると、「歯髄炎(しずいえん)」と呼ばれる歯痛が起こります。

一度歯髄炎になってしまった場合、たとえ薬などで一時的に痛みが和らいだとしても、元の健康な歯髄に戻ることはありません。放っておけば歯髄は壊死し、腐敗してしまいます。このような場合は局所麻酔を行い、炎症を起こした歯髄を取り除かなければなりません。炎症を起こした歯髄を取り除く治療を「抜髄(ばつずい)」と呼びます。

抜髄が必要になる症状
  • ・ズキズキと脈を打つように強く痛み、場合によっては健康な反対側の歯が痛くなったり頭痛がしたりと、痛む箇所がわからなくなる。
  • ・原因となる歯に触れると飛び上がるほどの痛みがある。
  • ・入浴・運動・夜間就寝時など、体温が上がると痛みが強くなる。
  • ・痛み止めを飲むと少し痛みが和らぐが、薬が切れてくるとまた痛み出す。
  • ・冷たい水を口に含むなど、冷やすことで一時的に痛みが和らぐ。
抜髄の治療方法
  • ・非常に痛みが強くて麻酔が効きづらい場合は、鎮静剤(ちんせいざい)で歯髄を弱らせてから後日に抜髄する場合もあります。
  • ・抜髄後、神経の入っていた部分をきれいに掃除してから根管充填(こんかんじゅうてん)を行います。→再感染を防ぐ「レジロンシステム」

感染根管治療(かんせんこんかんちりょう)

歯の中の汚染物質を完全除去・清掃する治療

歯の中の汚染物質(感染して腐ってしまった歯髄や溶けた象牙質)をきれいに掃除する治療を感染根管治療(かんせんこんかんちりょう)と呼びます。

鎮痛剤で痛みをごまかして歯髄炎を放置する、あるいは被せ物が取れたまま放置すると、歯の内部の歯髄は次第に反応が弱くなり、最終的には死んでしまいます。死ぬというのは歯髄の血管に血液が流れない状態を指し、神経が死ぬと痛みはなくなります。

痛みがなくなることで治ったかのように安心されてしまう方もおりますが、放置してはいけません! 放置すると後々大変なことになります!

場合によっては痛みを伴うことなく自然に死んでしまい、気づかないこともあります。歯髄が死んで腐敗すると、繁殖した細菌は歯の内部の象牙質に侵入しながら、歯を支える歯根(しこん:歯の根っこ)のまわりの骨を溶かして膿が溜ります。これを根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と呼び、進行すると耐えがたい痛みと腫れを伴います。

感染根管治療が必要になる症状

慢性期

  • ・普段は痛みがないが、疲れているときや体調が悪いとき、歯の付け根にうずき・鈍痛が起こる。
  • ・歯肉(しにく)を押すと違和感がある。
  • ・物を咬むと違和感がある。
  • ・走ったり階段を駆け降りたりすると上の奥歯が痛む。
  • ・歯肉に小さな穴があいており、そこから膿が出ている。
  • ・歯肉が腫れたり、潰れたりを繰り返している。

急性期

  • ・特定の歯がとにかく痛み(激痛)、痛み止めを飲んでも全く効かない。
  • ・眠れないほど痛い。
  • ・しばらくしたら歯肉が腫れてきた。
  • ・上の歯であれば目の下まで、下の歯であれば首のあたりまで腫れてきた。
  • ・物が飲み込めないくらい喉が腫れてきた。
  • ・微熱があり体がだるい。
感染根管治療の治療方法
  • ・歯肉が腫れている場合、切開して内部の膿を出します。
  • ・抗生物質や解熱鎮痛剤を処方します。
  • ・食べ物が飲み込めないなど、あまりにも腫れや発熱がひどい場合は点滴や入院が必要になります。蜂窩織炎(ほうかしきえん)と呼ばれる生命にかかわる重篤な全身疾患になる場合があります。
  • ・根管の中の感染源をすべて取り除いたら根管充填(こんかんじゅうてん)を行います。→再感染を防ぐ「レジロンシステム」

再根管治療(さいこんかんちりょう)

初回の根管治療が成功しなかったときに行う治療

根管治療が終了した歯に適切な被せ物をセットしたら、以降は健康な歯と同じように咬むことができます。しかし根管治療終了後も歯のまわりの違和感が消えなかったり、病巣が治らなかったりする場合があります。

再根管治療が必要になる症状
  • ・治療後数ヵ月、場合によっては年単位で違和感が残り思うように咬めない。
  • ・痛みや腫れが再発した。
  • ・痛みはないが治療した歯の歯肉から膿が出ている。
再根管治療が必要になる原因
  • ・根管の湾曲や枝分かれが原因で汚れの取り残しがある。
  • ・根管の湾曲や枝分かれが原因で根管充填が不十分である。
  • ・見落としによる未治療の根管がある。
  • ・根管充填が終了してから被せ物を入れるまでに長い期間があいてしまったため、再び細菌感染した。
  • ・被せ物の適合が悪く隙間から細菌感染した。
  • ・被せ物の横から新たな虫歯が発症して細菌感染した。
  • ・歯根が破折(縦割れ)した。
再根管治療の治療計画
  • ・治療した歯の被せ物を外します。
  • ・次に、以前の治療時に詰めた充填剤を取り除きます。
  • ・写真下のほうに見えるピンク色の材料は以前に根管治療を受けた際に詰められたゴム質の充填剤です。充填剤のまわりには感染によるバイオフィルムが作られ、真っ黒な汚れが溜っています。治療では根管治療専用の細い超音波チップを使って充填剤と汚物を完全に除去します。
  • ・歯根が垂直に破折した場合は原則抜歯となります。それでも抜歯をしたくない、という場合には、長期間の補償はできませんが再治療時に割れた歯を接着剤でつなぎとめる方法があります。ご相談ください。

再根管治療の成功率は、1回目の治療と比較して低くなると言われています。なぜならばバイオフィルムに包まれたゴム質の充填剤が根管内にへばりついて取りづらく、感染源の取り残しが生じやすいためです。

だからこそ初回の精密根管治療が必要なのです!

精密根管治療ではマイクロスコープで患部を直接確認しながら、超音波チップや専用に開発された器具を使い、汚れた充填剤を最後のひとかけらまで丁寧に除去します。

  • 取り残した充填剤 専用の除去器具 除去後きれいになった根管

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